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2009.03.10

D-0002. 最大測定可能ソリ量 — TT

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最大測定可能ソリ量

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「知って得する干渉計測定技術!」
2009年3月10日号 VOL.002

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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干渉計で表面形状を測定する際に、気になることとして、
分解能、精度、ダイナミックレンジ 等が挙げられます。

平面度測定において、実際に興味のあるダイナミックレンジとは、
どこまで大きく反ったものが測定できるか、つまり最大測定可能ソリ量です。
今回は、この最大測定可能ソリ量について考察することにします。

まず、最大測定可能ソリ量を計算する上で欠かせないのが、
ローカル スロープ リミット(LSL)です。
これは、CCDカメラの2ピクセルに干渉縞が1本以上入り、
高さ情報をサンプリングできなくなる条件です。

  LSL [um/mm] = (1/2) × Sensitivity [um/fr] ÷ 横分解能 [mm/pixel]

で表されます。
Tropel平面度測定機FlatMaster のLSLを計算すると、次のようになります。

測定物直径:横分解能:LSL(S=1.5):LSL(S=4.0):LSL(S=9.0)
  50mm : 0.13 :  6.0  : 16.0  : 36.0
  100mm : 0.25 :  3.0  :  8.0  : 18.0
  150mm : 0.38 :  2.0  :  5.3  : 12.0
  200mm : 0.50 :  1.5  :  4.0  :  9.0

ただし、SはSensitivity(縞感度)を表します。

それでは、このLSLをもとに、最大測定可能ソリ量を計算してみましょう。


1)放物線状ソリ形状
測定物の形状が放物線状であったと仮定して、計算してみます。

zを高さ、xを横方向、aを係数とすれば、放物線は、

  z = ax^2

で表されます。
このとき、各点における局所勾配は、微分 dz/dx ですので、

  dz/dx = 2ax

となります。
測定物のx座標がpのときにLSLに達したとします。式で書くと、

  LSL = 2ap

です。これをaについて解けば、

  a = LSL / (2p)

となります。これらを元の放物線の式に代入すると、
最大測定可能ソリ量 Z_max [um] が求まります。

  Z_max = (LSL / (2p))p^2 = (p/2) × LSL

測定物の中心を放物線の頂点として、pには測定物の半径、
LSLには、上記の表の数値を代入することで、
最大測定可能ソリ量 Z_max [um] の表ができます。

測定物直径:Z_max(S=1.5):Z_max(S=4.0):Z_max(S=9.0)
  50mm :  75.0  :  200.0  :  450.0
  100mm :  75.0  :  200.0  :  450.0
  150mm :  75.0  :  200.0  :  450.0
  200mm :  75.0  :  200.0  :  450.0

表を見てお分かりの通り、ソリ形状が放物線状の場合、最大測定可能ソリ量は、
測定物の大きさに依らず、Sensitivityのみで決まってしまいます。
(これは、横分解能が測定物直径で決まるので、うまくキャンセルしてしまうためです)


2)円弧状ソリ形状
続いて、測定物の形状が円弧状であったと仮定して、計算してみます。

zを高さ、xを横方向、rを曲率半径とすれば、円の方程式は、

  x^2 + (z - r)^2 = r^2

ですので、下半分の円弧の方程式は、

  z = r - √(r^2 - x^2)

です。
このとき、各点における局所勾配は、微分 dz/dx ですので、

  dz/dx = x / √(r^2 - x^2)

となります。
測定物のx座標がpのときにLSLに達したとします。式で書くと、

  LSL = p / √(r^2 - p^2)

です。これをrについて解けば、

  r = p × √(1 + 1/(LSL)^2 )

となります。これらを元の円の式に代入し、
最大測定可能ソリ量 Z_max [um] が求まります。

  Z_max = p × √(1 + 1/(LSL)^2 ) - √( p^2 × (1 + 1/(LSL)^2 ) - p^2 )
     = p × √(1 + 1/(LSL)^2 ) - p / (LSL)

pには測定物の半径、LSLには冒頭の表の数値を代入することで、
最大測定可能ソリ量 Z_max [um] の表ができます。

測定物直径:Z_max(S=1.5):Z_max(S=4.0):Z_max(S=9.0)
  50mm :  74.9993 : 199.9872 : 449.8543
  100mm :  74.9998 : 199.9968 : 449.9636
  150mm :  74.9999 : 199.9986 : 449.9838
  200mm :  75.0000 : 199.9992 : 449.9909

今度は放物線の場合と異なり、測定物直径に依存した結果になります。
しかし、結果はほぼ、

  Z_max(S=1.5) = 75 um
  Z_max(S=4.0) = 200 um
  Z_max(S=9.0) = 450 um

としてしまっても良い感じです。
これは、円の方程式をテーラー展開し、
測定物直径に対してソリ量が十分小さいとして、高次の項を落とせば、
放物線と同じ式になることからも確かめられます。


ただ、実際の測定となると、形状も理想的ではありませんし、条件も様々です。
しかし、上記で求めた理論値を目安にして、実際の測定に臨むことができるはずです。


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高野智暢

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