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2022.12.14

A-0142. エネルギーとは何か — T.T

 
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エネルギーとは何か

発行:エスオーエル株式会社
https://a13.hm-f.jp/cc.php?t=M352790&c=6090&d=eb6f

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2022年12月14日号 VOL.142

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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エネルギーとは何か?という問いに対しては、
明確な回答があります。

物理学者ファインマンの教科書の該当部分(4-1 vol.1)を引用すると、

 「エネルギーとは何だろうか。
  それについては、現代の物理学では何もいえない。
  このことは頭に入れておく必要がある。
  ...
  いろいろな式のからくりや理由にはふれないという点で、
  エネルギーというのは抽象的なものなのである。」

と書いてあります。
念のため、原文も引用しておくと、

  「It is important to realize that in physics today,
   we have no knowledge of what energy "is".
   ...
   It is an abstract thing in that it does not tell us
   the mechanism or the "reasons" for the various formulas.」

とあります。

こういう結論は、大好きです。
こういう結論が好きだから物理学を専攻していたのか、
物理学を専攻することでこういう結論が腑に落ちるようになったのか、
順序は分かりませんが、自分の趣味趣向に合った物の見方です。

物理のテストの点数や単位を取るための勉強をしてきたのであれば、
このような観点は持たなかったと思います。
公式を覚えて、問題を解くには不要な考えですし、
何より、頑張って時間と労力を掛けて学んだものが、
意味のないことだと否定されるようで、虚無感が出てきます。

でも、自分のライフワークとして、
「全てに実体はなく、関係性によってのみ成り立っている」
という本質の理解があり、まさに、我が意を得たりという気分です。

そのため、「存在論」とか、「時間」「空間」「物質」「力」
といったものに興味があり、物理学や哲学を考え続けています。

最新の物理学の理論では、
「時間は存在しない」「空間も存在しない」「重力とは見かけの力」
という突拍子もない説がありますが、
結論はあながち間違っていないと感じます。

勿論、科学であるならば、仮説と検証のサイクルが必要で、
信じるだけでは宗教です。


では、運動エネルギー (1/2)mv^2 は、
なぜそのような式になるのでしょうか。

答えは簡単で、何度も強調しているように、
「なぜ」に答えることはできず、実験で確認されているからです。
そして、これまで(理論の適用範囲内では)反例は見つかっていません。

物理学が学問体系として成り立っているのは、
帰納と演繹によって、
具体と抽象のピラミッドが構築されているからです。

そのため、運動エネルギー (1/2)mv^2 という式を導出することができる
原理を置いて、その原理から演繹することができます。

科学を外れてしまうのは、その原理が帰納されたものであることを忘れ、
原理から数式を使って導かれたものが宇宙の真理だと信じてしまう時です。

それさえ忘れなければ、
原理から導出された式が奇跡的に現象を説明する感動は、
何度味わってもクセになる感覚です。

ファインマンの教科書 13-1 (vol.1) では、
ニュートンの第2法則(ニュートンの運動方程式)から、
位置エネルギー mgh と 運動エネルギー (1/2)mv^2 の和が一定
ということを証明していますが、
ファインマンが「奇跡中の奇跡である!」「miracle of miracles!」
と書いています。

今回、この記事を書くために、ファインマンの教科書を開きましたが、
前々回の記事(2022年10月12日号 VOL.140)では、
自分で何も参照せずに、運動方程式から同様の証明をしました。

比べてみると、本質的には全く同じことをやっていますが、
表記やロジックの組み立てが完全には一致しないため、
表面的にみると別解答のように見えます。

やはり、ひとつの教科書でやり方を覚えて、
何かを理解した気になるのは、本当の理解にはつながらないと感じます。

いろいろな本を読み、できるだけいろいろ忘れた状態で、
出発点を明確にして、自分でロジックを組み立てるのが重要だと感じます。


運動エネルギー (1/2)mv^2 を
ニュートンの運動方程式から導く方法は、
やっていることの本質は一つですが、
表記や見た目が違う解答は何通りも書けます。


一方で、現代物理学に足を踏み入れようとすると、
最低あと2通りの本質の異なる、
別の原理からの導出を知っておいた方が良いかもしれません。

一つは、特殊相対性理論から導く方法です。

特殊相対性理論は、「光速度不変原理」と
全ての慣性系において物理法則が同じ表現となることを要請する
「特殊相対性原理」によって成り立っています。

これらの原理から導かれるのは、有名な公式:

  E = mc^2

です。
ここでの質量 m を 静止質量 m0 で書き直すと、

  E = (m0)/√{ 1-(v^2)/(c^2) } c^2

となり、これをテーラー展開して、

  E = (m0) c^2 { 1 + (v^2)/(2c^2) + (3v^4)/(8c^4) + ... }

なので、光速に対して十分低速な物体の運動エネルギーは、
第2項の (1/2)(m0)v^2 になるという導出です。


もう一つは、ネーターの定理から導出する方法です。
そのコンセプトは、
「エネルギーとは時間の対称性に関する保存量である」
というものです。

何度かメルマガの記事に書いている文言ですが、
紙に手書きやTeX打ちで、導出を何度も書いた経験はあるものの、
テキスト打ちのメルマガで面倒な数式を書いた記憶がないので、
詳細な計算が記事にないようであれば、いつか書いてみようと思います。


--
高野智暢

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