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2022.02.09
A-0132. 三角形の重心 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 三角形の重心 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2022年2月9日号 VOL.132 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 三角形の重心は、数学で感動を味わえる題材の代表格です。 もし、三角形の重心のことを、 重さの中心であり、その点で吊り上げるとバランスする点 という「性質」だけを覚えているのであれば、 感動を味わえるチャンスです。 感動という主観によるものを解説するというのは 野暮なことですが、 感動を多くの人と共有したいと思う気持ちは、 人間の欲求の一つだと思います。 さて、三角形の重心の定義を書くと、 「3本の中線の交点を重心と呼ぶ」です。 (中線 = 三角形の頂点とその向かい合う辺の中点を結んだ線分) 定義には重さとかバランスとかは含まれていません。 定義から出発して、性質を証明しながら導いていく という演繹の方向は、数学の常套手段ですが、 定義を作るというのも数学の重要な方向です。 (多くの性質から帰納する方向です。) 定義を憶えて、演繹の方向だけやっていると、 味わえない楽しみがあるので、 どうしてそのような定義になったのかとか、 そもそもどうしてそのように名前を付けたのか というのを考えると楽しいです。 数学で好きな用語を挙げると、例えば、 「芽」「茎」「根」があります。 植物の部分のような名前です。 「根」は、多項式方程式の解のことで、 ルート(root)の日本語訳です。 平方根 や 立方根 と言う時の 根 です。 芽 や 茎 は 層 の理論を勉強すると出てきます。 そこで、「重心」という名前についても考えてみます。 「重心」という用語の定義を 「重さがバランスする点」としても良いはずです。 そもそもこれが「重心」という一般的な言葉の定義です。 すると、「3本の中線の交点」のことを別の名前に 定義する必要があります。 例えば、「G点」と命名します。 結果として、 「G点」=「重心」が証明できる(これは感動ポイントの一つ)ので、 「三角形の重心」という場合の「重心」という用語の定義を 「G点」と同一視して、置き換えるのです。 抽象化 や 同一視 も数学の常套手段です。 リンゴ 3個 と ミカン 3個 の 3 という共通性質を抽出することで、 もはやリンゴやミカンを考えなくても 3 を考えられるようになります。 「重心」に関しては、定義すら忘れてしまっても、 性質だけ覚えて使うことができるということが起こります。 「重心」という用語について、思ったことを書き連ねるだけで、 長くなってしまいましたが、 おそらく、最も感動するポイントは、 「どんな三角形を持ってきても、3本の中線が必ず 1点で交わる」 という事実だと思います。 「三角形には重心という 1点が存在して、それは中線を結ぶことで得られる」 という性質を覚えてしまうと、感動から少し遠ざかります。 せっかく、脳には忘れるという能力があるので、 いろいろ忘れましょう。 どんな三角形を持ってきても、2本の中線を引けば、 3本目は必ずその交点を通るのです。 もはや奇跡です。 2本の線で交点を作り、 (その交点を通るように3本目を引くのではなく、) 1本目と2本目と同じ規則に従って3本目を引くと 数ある可能性の中から、必ず同じ交点を通るのです。 証明してみると、確かにそうだと確信できますが、 (人から聞いて覚えるのではなく、自分で証明してみると、) 何かとてつもない真実を知った気持ちになります。 定義を見て、性質(定理)を見て、 えっ本当にそうなの?と思って、 自分で証明してみて、確かにそうだと納得して驚く というのを繰り返すと、とても楽しめます。 感動すると、次はなかなか忘れにくくなります。 -- 高野智暢