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2020.07.08

A-0110. 関数の連続性を論理式で書いてみる — T.T

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関数の連続性を論理式で書いてみる

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2020年7月8日号 VOL.110

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



数学は科学技術の基礎だからという理由だけで、
無味乾燥な反復練習を繰り返したり、
興味の沸かない難しいことを覚えたりするのは、
楽しくないと思うのです。

このメルマガは、分かればシンプルで簡単なことも、
文章を捏ね繰り回して、小難しく書くことを
楽しんでいる感もあるので、
話半分で読んでもらえると良いのですが、

数学の専門書は逆に、楽しい部分を覆い隠して、
あたかも分かった人同士が、分かったご褒美を
共有できるシステムかのように、ドライに書いてあります。


人はそれぞれ、興味や疑問に思うことが違うので、
スタート地点も進むステップも違うはずです。

なので、きっと、教科書通りに進むと、
(教える側は効率的でも、)学ぶ側は非効率なことが
多々あるのだと思います。


では、これまで散々、微分積分の基礎としての実数について
書いてきたので、その流れで、関数の連続性について触れます。

何で、関数の連続性の話が出てくるのかというと、
微分を使っていると、こんな計算しても大丈夫なのか?
という疑問が出ることがあるので、
心配で気になってどうしても知りたくなるのです。

多分、気にならない人が、
教科書に出てくるから勉強しようとすると、きっと非効率です。

上手い教科書は、読み進めると、
気になるように書いてあるのだと思います。
(でもそんな本は、たいてい数学専攻の人向けに書いてある。)

教科書に沿って勉強すると、
覚えた公式を適用して、練習問題が解けるようになっています。

でも、実際に目の前の課題に応用しようとすると、
その公式を適用できる条件が揃っていることを確認する必要があります。

 あるいは、その課題を解決するのに不要な計算を
 勉強したばかりだからと無闇に使うのは、
 問題を複雑怪奇にする(本質を見誤る)だけで、
 やらない方がマシなこともあります。

そして、何かを計算するたびに、正しいロジックを辿っているのか、
心配になるはずです。

心配にならないと、よく落とし穴に引っ掛かります。
微分や積分のように極限や無限が絡む計算をしているのに、
落とし穴がないはずがないのです。

昔の人は、微分積分が開発されても、
すぐには安心して計算できませんでした。

でも、地道な積み重ねによって、現代の人は、
そこそこ安心して、微分や積分ができます。
さらに、抽象性を上げ、ロジックを整備することで、
適用できる範囲も広がっています。

その、昔の人が羨ましがる、心配な人がどうしても知りたい、
宝物のような武器?道具?秘伝書?金字塔?の一つが、
「関数の連続性」です。

それは、どんな形に表現されるかというと、

  実関数 f(x) がある点 x0 で連続であるとは、
  x が x0 に限りなく近づくならば、
  f(x) が f(x0) に限りなく近づくこと。

式で書くと、

  lim_{x→x0} f(x) = f(x0)

です。
でも、この式は、lim という記号が出てきて、難しそう
と思う割には、ちゃんと計算できないのです。

ここでも、lim を安心して使いたい、
あるいは、ロジックの穴がない計算を遂行したい、
という欲求が出てきます。

欲求が出てこないのに、勉強するのは、きっと非効率です。

その欲求を満たす素晴らしい表現を人類は既に手にしています。
それは、

  実関数 f(x) がある点 x0 で連続であるとは、
  任意のε>0 に対して、あるδ>0 が存在して、
  |x-x0|<δ となる全ての x について、
  |f(x)-f(x0)|<ε が成り立つこと。

という定義です。

既に、興味のない人にとっては、無味乾燥な表現です。
では、これをもっとドライにします。

なぜ更にそんなことをするのか?
小難しくするためではありません。
論理式で機械的に計算できるようにすることで、
次の興味に取り組むためです。

  ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x(|x-x0|<δ → |f(x)-f(x0)|<ε)

どうでしょうか。
とっても使いやすくなりました。

 人によっては、この論理式を見やすくするためか、
 条件の間に「,」を入れたり、
 s.t. (= such that) を入れたりしますが、
 論理式の計算を進めていくには、ちょっと邪魔な気もします。

このように論理式で書くと、数学のロジックを展開していくのに、
6種類の記号:

  ¬(~でない)
  ∧(かつ)
  ∨(または)
  →(ならば)
  ∀(任意の~について)
  ∃(ある~について)

で済むようになります。

さらには、論理式の式変形を練習することにより、
日本語や英語などの自然言語の罠に引っ掛かることなく、
数学を記号だけで進めることができます。


今回は、関数の連続性を論理式で書いてみただけです。
肝心の関数の連続性については何も解説していません。
論理式の計算方法にも触れていません。

伝家の宝刀のように出てきた関数の連続性の論理式ですが、
是非、滅多に使わない宝刀ではなく、
使い慣れた包丁やハサミのようにしたいものです。
(論理式に慣れると、きっと日本語や英語も上達します!)

そのためには、反復練習です!
(これで、冒頭から跳ね回っている散文がつながったでしょうか。)


面白いのはここからです。
それでは、またの機会に。


--
高野智暢

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