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2018.05.09

A-0081. 実数と完備化について — TT

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実数と完備化について

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2018年5月9日号 VOL.081

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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測定機を扱う場合には、
実数というものを知っている必要があります。

実数とはどういうものかを
よくよく考えてみると、結構奥が深いものです。

実数を知るためには、
歴史からみても、普通の人が数を理解する方法からみても、
自然数を知っていた方が良いです。
1,2,3,4,... という数が自然数です。

自然数は、ものを数えたり、順番を付けたりするのに使います。
でも、お金を数えるときに自然数では不十分なことがあります。
お金がないときに 0円と表したり、
お金を借りたときに、-1000円と表したりするには、
自然数だけでなく、0や負の数を考える必要があります。

そこで、登場するのが整数です。
...,-4,-3,-2,-1,0,1,2,3,4,... という数のことです。
整数は、自然数を含み、
足し算と引き算と掛け算が自由にできるようになります。

割り算も自由にできる数を考えるには、
整数では不十分で、有理数というものを考える必要があります。

有理数とは、2つの整数 a,b を a/b のように分数の形にした数です。
このとき、分母は 0 にならないようにします。
分母を 1 にすると、有理数が整数を含んでいることが分かります。


では、実数はというと、
有理数の次に出てくる数ですが、作り方は容易ではありません。
整数から有理数を作るには、分数(割り算)を考えればよかった
のですが、有理数から実数を作るには完備化という操作が必要です。

完備化によって、スカスカな有理数を
ビッチリ埋めることによって実数ができます。

有理数がどれ位スカスカかというと、
√2、つまり2回掛けて2になる数が有理数(分数で表せる数)に
ならないことから想像できます。

物の寸法を測るとき、1辺が1mmの正方形があれば、
その対角線の長さは、√2 mm になります。
もし、実数が無ければ、正方形の対角線の長さも
測れないことになります。

連続的に変化する量(長さや重さや時間など、例はたくさんあります)
を表すには、どうしても実数が必要になってきます。

有理数を完備化したときに穴埋めに使った数を
無理数と呼びます。
√2 の他に、円周率πなども無理数です。
そして、有理数がスカスカであるために、
圧倒的に無理数の方が多いことになります。


さて、さんざんスカスカだと言った有理数には、
稠密(ちゅうみつ)という性質があります。

稠密というのは、どんなに狭い幅の間にも必ずある
というギッシリ詰まった状態ということです。

有理数は分数で書けるので、分母にとても大きな整数を持ってくれば、
非常に小さい数を作ることができます。
そして、どんなに狭い幅を作っても、それにたくさん詰め込めるだけの
数を用意することができるのです。

有理数は、ギッシリ詰まっている(稠密)のに、
穴だらけのスカスカなので、
大量の無理数でビッチリ穴埋め(完備化)して、
連続な実数を作るのです。


本当は、関数の連続という性質の話を本題にするつもりでしたが、
完備化の話で長くなってしまったので、
連続の話は次の機会にします。

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高野智暢 

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