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2023.05.10

D-0194. 波面収差による傾き成分の計算 — T.T

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波面収差による傾き成分の計算

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「知って得する干渉計測定技術!」
2023年5月10日号 VOL.194

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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今回は、斜入射干渉計で、具体的な計算例をやってみます。

平面度測定に使用するフィゾー干渉計では、
ビームエキスパンダで拡大したレーザーの平面波を用います。

この平面波が波面収差を持つときに、
どんな影響が出るかを考えることは興味深いです。


波面を関数 W(x,y) で書くことにします。

斜入射の場合、参照面で波面分割した参照光とテスト光を
重ね合わせて、干渉縞を作ることになります。

参照光は、参照面で反射した波面で、
テスト光は、参照面を透過して、サンプル表面で反射した波面です。

参照光が W(x,y) のとき、
テスト光は、W(x+δ,y) の横ずれを持って、
重ね合わさることになります。

縞感度を S = 2μm/fr として、波長 λ = 0.635μm とすると、
入射角度は、

  θ = arccos{ λ/(2S) }

なので、θ = 80.86565 [deg] です。

参照面とサンプル表面のギャップが g = 350μm であれば、

  δ = 2g tanθ

なので、δ = 4353.5μm と計算できます。


今、波面が平面波ではなく、球面波になっていると考えます。
非常に平面に近い球面なので、テーラー展開して、

  W(x,y) = h^2 /(2r) + h^4 /(8r^3) + ...

ですが、最初の項のみを使います。
ここで、r は球面の曲率半径、距離 h は h^2 = x^2 + y^2 です。

参照光とテスト光を重ね合わせたときの光路長差 OPD は、

  OPD = W(x,y) - W(x+δ,y)

なので、

  OPD = { x^2 - (x+δ)^2 } /(2r)  = -{ 2δx + δ^2 } /(2r)

と計算できます。
すると、x について一次の項によって、
傾き成分が現れることが分かります。

干渉計で傾き成分の縞が出てきたときは、
サンプルのチルト調整や最小二乗平面による基準の取り直しで、
(平面度測定においては)取り除くことができます。

しかし、厚みムラ測定など、基準を取り直せない場合、
傾き成分は、測定に影響を与えてしまいます。

ギャップを g から g+t に変化させてみます。
例えば、t = 350μm として、ギャップを倍の 700μm にします。

そのとき、傾きが 50mm 当たり 0.1μm 変化した場合の
球面波の曲率半径を求めてみます。

  δ’= 2(g+t) tanθ = 8707.1μm

なので、

  -2(δ - δ’)x /(2r) = 0.1

を解くことになります。
x = 50mm = 50000μm と δ と δ’を代入して、r を求めると、

  r = 2.2 km

という結果になります。


2インチのウェーハで、この傾き 0.1μm が許容できない場合、
平面波を曲率半径 2.2km 以上となるように追い込む必要がある
ということですが、

2.2km のコンパスで描いた円の一部の円弧を想像してみると、
円弧はもはや直線で、その凄さをイメージできるのは、
想像もできないくらい大きなコンパスだなということくらいです。


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高野智暢

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