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2022.04.20
D-0181. FlatMasterのレーザーの偏光について — T.S
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FlatMasterのレーザーの偏光について
発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/
連載「知って得する干渉計測定技術!」
2022年4月20日号 VOL.181
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。
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初めまして。営業技術グループの清水です。
今月より「知って得する干渉計測定技術!」を定期的に担当致します。
今回は初回ですのでまずは簡単に自己紹介を致します。
出身は地元埼玉で、大学時代は物性物理学を専攻していました。
卒業後約10年間、半導体製造装置の機械電気の設計開発業務を行っており、
この度縁あってエスオーエルに入社致しました。
機械電気設計者から光学技術者への転身ということもあり、
毎日が学びの連続です。
そんな私が日々疑問に思ったことや学んだことを
この場をお借りしてoutputしていきたいと思います。
さて、それでは本題に入ります。
今回のお題は「FlatMasterのレーザーの偏光について」です。
先日先輩から、「FlatMasterでは組み立て時に偏光方向を調整します」
という説明を受けました。
この情報だけ聞くと、
1.どの偏光を使用するのだろう??(P偏光? S偏光?)
2.なぜ偏光を調整する必要があるのだろう??
という疑問が当然浮かぶと思います。
この疑問について、
振幅反射率、透過率と干渉縞のコントラストという観点から
アプローチして自分なりに結論を出してみましたので
その結果を記載致します。
どうかお付き合いください。
それでは始めていきましょう(=゜ω゜)ノ
まず初めに、P偏光とS偏光の反射率、透過率について
考えていきましょう。
と、その前に、言葉の定義の再確認をしていきます。
P偏光とは、電場の振幅方向が入射面に水平な偏光成分
S偏光とは、電場の振幅方向が入射面に垂直な偏光成分
入射面というのは、入射光、反射光、屈折光を含む平面
さて、それでは反射率と透過率について、
P偏光の反射率を Rp、透過率を Tp、
S偏光の反射率を Rs、透過率を Ts
とするとそれぞれ次式で表されます。
(この式の導入についてはいずれ私が担当するメールマガジンで
ご説明できればと思います。)
Rp = {tan(θ1-θ2)}/{tan(θ1+θ2)}
Tp = {2sin(θ2)cos(θ1)}/{sin(θ1+θ2)cos(θ1-θ2)}
Rs = {-sin(θ1-θ2)}/{sin(θ1+θ2)}
Ts = {2sin(θ2)cos(θ1)}/{sin(θ1+θ2)}
ここで、
θ1は境界面への入射角
θ2は境界面での屈折角
です。
次に干渉縞のコントラストについて考えます。
干渉縞のコントラストの大きさは次式で表されます
C = (Imax-Imin)/(Imax+Imin)
Imax とは、干渉のもっとも強め合った部分の明るさ(強度)
Imin とは、干渉のもっとも弱めあった部分の明るさ(強度)です。
理想的には Imin=0 となった時に
最もはっきりとしたコントラストになります。
つまり干渉光の弱め合った部分の明るさが 0 になることが
理想的でありです。
光の強度は振幅の二乗に比例します。
そのため、この条件は干渉する2つの光線の振幅が等しいこと
だということは容易に想像ができると思います。
さて、それでは
P偏光とS偏光の干渉のコントラストについて、
それぞれ考えてみましょう
FlatMasterでは干渉する2つの光線(参照光とテスト光)の
経路は以下のようになっています。
参照光:プリズム表面で1回反射した光
テスト光:プリズム表面を1回透過して、
wafer面で反射後再度プリズム面を透過した光
実際には参照光とテスト光が分岐する前後でも
透過、反射が発生しますが、今回はテスト光と参照光の
差分のみを考えるため省いています。
また、FlatMaster は、部分コヒーレント光を使っていますが、
簡単のためコヒーレント光で考えます。
上記より、
元の光線の振幅 1 とすると以下の式で表せます。
P偏光の参照光とテスト光の振幅(Ap,Bpとする)は、
Ap = Rp
Bp = Tp×Rw×Tp’
(ただし、Tp’は空気中からプリズムに侵入するときの透過率)
S偏光の参照光とテスト光の振幅(As,Bsとする)は、
As = Rs
Bs = Ts×Rw×Ts’
(Ts’は空気中からプリズムに侵入するときの透過率)
注)Rw は wafer での反射率です。
今回は簡単のため鏡面 wafer とし Rw=1 で計算します。
また、
Imax = (A+B)^2 (最も強めあう点の強度なので、強め合う点の振幅の二乗)
Imin = (A-B)^2 (最も弱め合う点の強度なので、弱め合う点の振幅の二乗)
(本来は振幅の「二乗に比例」なので比例定数が付きますが、
今回は分子分母で消えるので省略)
さて、これで必要な式はすべてそろいました。
あとは各センシティビティに対応した角度(サンプル面への入射角が約79°~88°)
でのコントラストの値を計算するだけです。
結果は添付の図のようになりました。
グラフから分かるように、
縞感度が高い(1.8um程度)の時では、P偏光もS偏光も差がないのですが、
縞感度を下げていくとP偏光の方がコントラスト的に有利だということが分かります。
そのため、今回計算したような条件では
レーザーの偏光方向をP偏光に調整するようにしています。
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T.S

