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2011.10.10

D-0047. フレネルの式と反射率 — TT

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フレネルの式と反射率

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「知って得する干渉計測定技術!」
2011年10月10日号 VOL.047

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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弊社の提供している平面度測定機 FlatMaster は、斜入射干渉計です。
斜入射を採用するメリットの一つに、反射が取りやすくなることが挙げられます。

今回は、斜入射の反射率を知る基礎となる「フレネルの式」をご紹介します。

空気(n=1 とする。)と屈折率 n の媒質による界面があるとします。
界面の上半分はずっと空気、下半分はずっとその媒質で満たされているとします。

入射角θで空気から媒質に入射する光を考えます。
屈折角をθ’とすると、スネルの法則は、 sinθ = n sinθ’ です。

フレネルの式を導くには、
マクスウェル方程式を与えられた境界条件で解けばよいのです。
境界条件は、
 ① 磁束密度と電束密度の法線成分の連続性
 ② 電場の強さと磁場の強さの接線成分の連続性
です。

すると、偏光のp波とs波に対して、振幅の反射率がそれぞれ、

  r_p = tan(θ-θ’) / tan(θ+θ’) ,
  r_s = -sin(θ-θ’) / sin(θ+θ’)

と求まります。
強度の反射率は、これらを二乗することで求まり、

  R_p = tan^2(θ-θ’) / tan^2(θ+θ’) ,
  R_s = sin^2(θ-θ’) / sin^2(θ+θ’)

です。
これが、フレネルの反射式です。
計算すれば分かりますが、同時にフレネルの透過式も導かれます。
また、スネルの法則も計算の過程で導かれます。

今では、マクスウェル方程式を解いてフレネルの式を導出しますが、
フレネル自身は、弾性波の理論から導いたそうです。
また、ファインマンは教科書の中でユニークな導き方をしています。


では、フレネルの式から具体的な値を計算してみましょう。

ガラス(n=1.5)へ垂直(θ=0°)に入射するとき、R_s = R_p = 4% です。
ガラス(n=1.5)へθ=78°で入射するとき、R_s = 48%, R_p = 17% です。
ガラス(n=1.5)へθ=86°で入射するとき、R_s = 78%, R_p = 57% です。
ガラス(n=1.5)へθ=88°で入射するとき、R_s = 88%, R_p = 75% です。

実は、p波には反射率が0%になるところがあり、
ガラス(n=1.5)では、θ=56°付近です。
これをブリュースター角と呼びます。

これで、めでたしめでたしと終わりたいところですが、
あと2つ関連する事柄として、複素屈折率と多重反射を紹介します。


まずは、複素屈折率(光学定数)です。
フレネルの式から金属や半導体の反射率が計算できるようになります。

そのために、複素屈折率を N = n -ik と書きます。
iは虚数単位で、kを吸光係数と呼びます。

スネルの法則の n を N に置き換えることで、
光の吸収も同時に扱えるようになります。

波長 632.8nm の光が垂直に入射するときを考えます。

Si (N=3.88-i0.02) の反射率は、35% です。
Cr (N=3.14-i3.31) の反射率は、55% です。
Al (N=1.37-i7.62) の反射率は、91% です。
Cu (N=0.24-i3.42) の反射率は、93% です。
Au (N=0.18-i3.07) の反射率は、93% です。
Ag (N=0.14-i3.99) の反射率は、97% です。

金属の複素屈折率は、波長が変わると急激に変化するので、
光源が違う場合は注意が必要です。


次に、多重反射です。
界面が2つある場合の反射率を考えてみます。
フレネルの式は、界面が1つで解きました。
厚みを持った平行平面板(あるいは薄膜)での反射率はどうなるでしょうか。

1つ目の界面で屈折した光は、2つ目の界面で再び反射と屈折をします。
その反射光が1つ目の界面に戻ったとき、またまた反射と屈折をします。
この繰り返し、つまり多重反射がある点における反射率を決めます。

多重反射した光を全て足し上げていくと、合成した反射波の振幅が計算でき、
それを二乗することで、多重反射の干渉で決まる反射率 R’が求まります。

屈折率 n、波長 λ、厚み h、とすると、位相差 δは、

  δ = (4πnh/λ)cosθ’

です。界面の反射率を R とすると、R’は、

  R’= 4R sin^2(δ/2) / ( (1-R)^2 + 4R sin^2(δ/2) )

となります。

界面が増えると、計算がもっと厄介になってきます。

このような計算は、
反射防止膜や増反射ミラーの設計に欠かせない基礎になっています。


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高野智暢

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