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2022.04.13
A-0134. 平行六面体の対角線の長さ — T.T
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平行六面体の対角線の長さ
発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/
連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2022年4月13日号 VOL.134
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
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6枚の正方形で立体を作ると、立方体ができます。
同じように、6枚の平行四辺形で立体を作ると、
平行六面体ができます。
三次元(座標)測定機を調整していると、
平行六面体の計算をその場でやる必要に迫られることがあります。
今回は具体例で、平行六面体の対角線の長さの計算をしてみます。
考える状況は、X,Y,Z の直交軸を持った測定機で、
立方体を測定します。
測定機の可動範囲は、どの軸も 400mm とします。
測定機の座標軸は、一辺 400mm の立方体に沿っている状態が
理想ですが、直角が出ていないと、平行六面体に沿う形になります。
平行六面体の頂点に名前を付けておきます。
X軸を OA、Y軸を OB、Z軸を OC とします。
XY平面内の平行四辺形を OADB とし、
それを OC の方向に平行移動したものを CEGF とします。
これで、平行六面体 OADB-CEGF になります。
点 O から一番遠い点は、点 G です。
このような空間図形を考えるとき、ベクトルを使うと便利です。
ベクトル a, b, c をそれぞれ
a = OA = (400, 0, 0)
b = OB = (400 cosα, 400 sinα, 0)
c = OC = (δ1, δ2, ξ)
とします。
ここまでセットアップすれば、必要な数値を計算することができます。
まずは、X軸とY軸を直角にしたいので、αを測定したいです。
OD 方向に 400mm の棒を置いて測定すると、
α < 90°であれば、棒は 400mm よりも短く測定されてしまいます。
OADB が正方形であれば、|OD| = |AB| ですが、
α < 90°ならば、|OD| > |AB| になります。
ここで、混乱しやすいポイントがあります。
測定機の OD が 長くなった分、400mm の棒は短く測定されます。
OD の長さは、
|OD| = |a+b|
= 400 √{ (1+cosα)^2 + (sinα)^2 }
= 400 √{ 2 + 2cosα }
です。
同様に、AB の長さは、
|AB| = |a-b|
= 400 √{ 2 - 2cosα }
です。
α = 90°のとき、|OD| = |AB| = 400 √2 なので、
短く測定されるときの倍率は、1/√(1+cosα) 、
長く測定されるときの倍率は、1/√(1-cosα) です。
実際に 400mm の棒を測定した結果が、
OD 方向で、399.99mm (0.01mm 短い)となった場合、
α = 89.997°です。
このとき、AB 方向で測定すると、
400.01mm (0.01mm 長い)となるはずです。
(ならなかった場合は、別の調整が必要です。)
このように Y軸が本来の方向に対して、0.003°傾いている
ということが分かれば、これを調整します。
一辺 400mm の正方形にするには、
平行にずれたオフセット分(δ0)を戻してあげればよいので、
δ0 = 400 cosα = 0.02mm
の調整となることが分かります。
X軸とY軸の直角が調整できたら、次は Z軸の倒れを調整します。
Z軸の倒れは、X軸方向(δ1)と Y軸方向(δ2)があります。
その計算準備として、ベクトル c の Z成分 ξ を計算しておきます。
|c|= 400 なので、
ξ = √{ 400^2 -(δ1)^2 -(δ2)^2 }
です。
次に、平行六面体の対角線 OG, AF, DC, BE の長さを求めます。
|OG| = |a+b+c| = √{ 3*400^2 + 800*(δ1 + δ2) }
|AF| = |a-b-c| = √{ 3*400^2 + 800*(-δ1 + δ2) }
|DC| = |a+b-c| = √{ 3*400^2 + 800*(-δ1 - δ2) }
|BE| = |a-b+c| = √{ 3*400^2 + 800*(δ1 - δ2) }
もし、δ1 = δ2 = 0 の立方体になっていた場合は、
|OG| = |AF| = |DC| = |BE| = 400 √3
となるはずです。
従って、400 √3 に対して、上記の式との比を取ることで、
各方向の伸縮倍率を計算することができます。
例えば、OG, AF, DC, BE の方向でそれぞれ、
L1 = 399.9933
L2 = 400.0033
L3 = 400.0067
L4 = 399.9967
という測定結果が得られたとします。
(同様に、400 に対して比を取ることで、倍率が出ます。)
求めたい δ1, δ2 に対して、独立な方程式の数は足りていますので、
解くことができます。
今の場合、
δ1 = 0.015 mm
δ2 = 0.005 mm
となります。
もし、このような調整を理屈も分からずに、
行き当たりばったりの手探りでやっていると、
いつまでたっても終わりません。
ベクトルの計算ができると、測定結果を見て、何が起こっているのか
知ることができるので、調整を円滑に実施できます。
--
高野智暢

