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2020.06.24

A-0109. 実数の連続性 — T.T

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実数の連続性

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2020年6月24日号 VOL.109

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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座標測定機やX線CT、干渉計といったシステムを理解し、
応用するには、それなりの技術的なベースが必要になります。

装置自体は、用途が決まっていて、運用が軌道に乗ってしまうと、
特に難しいことも考えずに、安定して容易に扱うことができます。

しかし、新たな課題に直面すると、解決のために、
技術的なベースを駆使することになります。

機械にしても、電気にしても、光学にしても、
微分や積分は、基礎としてどうしても避けて通れない道です。

そこから、直交多項式やフーリエ変換など、
個別の専門数学を習得して、それを技術に応用して使いこなすには、
結構な勢いでステップを駆け上がる必要があります。

でも、急ぎすぎると、考え方をすっ飛ばして、
貧弱な基礎の上に切り張りのハリボテを作ることになるので、
本質的な解決に届かなかったり、そもそも楽しくなかったりします。

急いでゆっくり進むには、
細部と大局の両方を見た方が良く、そのためには、
全体像(構造、マップ)を常に意識するのが良いと思います。


微分や積分の計算は、練習すれば、習得は比較的容易です。

でも、計算や演算処理をコンピュータがやってくれる今は、
計算練習もさることながら、考え方の深い理解が重要だと思っています。

微分や積分を習得するマップは、教科書の目次がそれに当たると思いますが、
各セクションの概要(小マップ)も必要です。


微分や積分の基礎は、実数というものの構造を知ることです。
そのための実数論を延々と勉強しても、なかなか微分や積分に辿り着けません。

でも、実数の構造をある程度理解することは、
その先の専門数学を理解するのにとても役に立ちます。

とても前置きが長くなりましたが、
実数の連続性(完備性)の小マップを見てみましょう。


まず、これから扱う「実数」というものは、
これこれこういう性質を満たすものですよ、という宣言をします。
そのような宣言を公理と言いますが、最小限の前提を並べます。

その中でも実数にとって重要なのが、
(1) デデキントの切断公理 と呼ばれるものです。

 実数を2つの組(下組 A と 上組 B)に分けたとき、
 A に最大元があって B に最小元がないか、
 Bに最小元があって A に最大元がないか のいずれかである。

というものです。

もし、A に最大元があって B に最小元がある場合は、
A と B の間に飛びがあります。
(2組に分けたつもりが、Aの最大元とBの最小元の間の数を飛ばしている。)

もし、A に最大元がなくて B に最小元がない場合は、
A と B の間に途切れがあります。
⇒ このような途切れがなく、実数が連続性を持つという主張です。


この公理から出発すると、たくさんの定理が証明できます。
主要なものでは、
 (2) ワイエルシュトラスの上限または下限の存在定理
 (3) 有界な単調数列の収束定理
 (4) 区間縮小法の原理
といった定理です。

面白いのは、これらの定理の関係性です。

(1) を公理にして、(2) → (3) → (4) の順に証明済みの定理を使って、
次の定理を証明することができますが、
最後は、(4) を使って、(1) を証明することができます。つまり、

 (1) → (2) → (3) → (4) → (1)

のように輪になっています。

従って、どれを公理として出発しても、
残りを定理として証明することができます。

同様に、(1) ~ (4) と同値なものがたくさんあります。
前回使った ロルの定理 もその一つです。

トップダウンで下ってきたつもりが、
いつの間にか元の場所に戻っているというのは、
エッシャーのだまし絵(ペンローズの階段)を見ているようです。


数学の証明をただ延々となぞっても面白くないことが多いですが、
このような構造が見えた時、面白いなぁと思います。


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高野智暢

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