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2018.11.14

A-0087. 微分方程式の思い出 — T.T

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微分方程式の思い出

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2018年11月14日号 VOL.087

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



今回も思い出話をします。
もはや年を取ってきたのでしょか。

最初に微分とであったのは、小学生の高学年のときです。
科学番組が好きで、よく観ていました。
数字はそれほど好きではありませんでしたが、
記号は好きでした。(化学記号をたくさん憶えていました。)

ある番組を観ていると、
sin という記号が出てきました。
一緒に観ていた父親が「あれは三角関数だな」
と言いました。

sin という記号に意味があることに興味が出て、
本をたくさん読んで理解しようと頑張りました。
幸運にも家に本がたくさんあり、足りない本は買ってもらえました。

sin が三角形と関係があり、
本に書いてある通りに計算してみると、
答えが出るということが分かり、
分かってくると飽きてしまって興味が薄れていくところでした。

しかし、その sin が出てきた式は、
実は微分方程式の解として、

  ds^2 = ...

の中に出てくる記号の一つでした。
その微分方程式の解をちゃんと書くと、

ds^2 = -(1-a/r)dw^2 + (1/(1-a/r))dr^2 + r^2dθ^2 + r^2sin^2θdφ^2

です。
二乗は理解できましたので、難関の sin の意味が理解できれば、
後は簡単と思っていたのに、
ds ってなんだ?? となったわけです。

それが微分との出会いです。


それから、微分の本をたくさん読み、
計算はできるようになりました。

しかし、微分の概念の理解は容易ではありません。

中学生になるかならないか位に、
ムツゴロウさんは同じ年頃に高木貞治の「解析概論」を
読破したという情報を聞きつけ、
その本を買いました。

動物と戯れているムツゴロウさんが楽勝で読んだという本を
1ページに何日も掛けて、毎日読んでいた記憶があります。

中学校時代は、εδの計算と
リッチテンソルってなんだ?という課題に取り組んでいました。
つまり、微分の基礎となる実数論と応用の微分幾何学という両側から
微分を理解しようとしていました。

普通は、微分を理解してから、その基礎論と応用論に進むのだと
思いますが、自分の場合は順序が逆でした。
(おかげで、大学のεδ論法の授業は楽でした。)

そして、中学時代に最も微分の理解を助けたのが、
コンピュータです。
オイラー法とルンゲクッタ法が使えるようになると、
微分方程式を解くプログラムを書いて、
グラフィック描画させていました。


それから、高校に入ると数学は赤点が多かったように思います。

興味がある勉強しかしなかったのと、
数学はテスト勉強したら負け、テスト問題を見てから
公式から作るという変なこだわりが招いた結果です。

高校時代は、ベクトル解析をよくやりました。

この頃には、微分で連続的に記述できるものによって
世界は作られているというような偏見を持っていた
ように記憶しています。
(今では離散数学も好きで、微分中心の偏見はなくなりました。)


大学や大学院では、微分方程式は頻繁に使いました。
(特に量子論的な計算をたくさんやりました。)

大学3年生の夏休み頃、
毎日思い付く関数を手当たり次第積分してみたことがあります。
積分計算の分厚い紙の束ができました。

結局、微分方程式は積分することにつながるので、
この計算練習は、何かと役に立ちました。

大学と最初の大学院の研究論文は、
両方とも微分方程式に関係した何かでした。


会社を選ぶときになると、
「英語使いますか?」と「微分方程式使いますか?」
という質問をしました。

質問の意図が伝わらず、変な顔をされたこともあったように思いますが、
言葉のままで、英語と数学が活かせる仕事をしたいと思っただけです。
(それから、1つの興味が薄れてシフトしても、次の興味が湧く仕事。)

なかなか両方Yesという会社がない中、
弊社の社長が両方Yesという返答だったのを記憶しています。

入社してみてしばらくは、思ったほど微分方程式と縁がないかな
と思いましたが、(アプリケーション開発の)実務が増えていくと、
かなり微分方程式にまみれた仕事でした。

微分方程式を実際に解くことよりも、
概念を理解して、モデル化し、微分方程式を立てて、
問題の本質を考える仕事が多いです。


社会人になってから、また(同じ大学の別の)大学院に入って、
今度は確率微分方程式を勉強しました。

弊社は輸入機器を扱うため、為替が関係するので、何かの役に立てばと、
金融工学のいわゆるブラックショールズ方程式をやりました。

確率微分方程式そのものへの興味の方が強かったとも言えますが、
ある程度やって、全体が見えてくると、興味が薄れてきます。
もちろん、奥が深いのは分かりますし、まだ知らないことだらけ
ですが、やりたいことがもっとあるので、興味がシフトします。

結局、このときの研究論文は、微分方程式ではなく、
離散数学的な何かになりました。


今も、力学の問題、電気の問題、制御の問題などを仕事で扱うときに、
微分方程式の考え方で物事をみます。

前回のメルマガでは、(これまであまり触れないようにしていましたが)
量子力学の微分方程式にも触れました。

25年以上前に買った解析概論は、
黄色くなっていますが、今でもたまに読みます。


また、頭の中に引っかかっているいくつかの数学の問題を
毎日、今日は解けていないかなと確認しています。

たまに、夢の中で解けたり、いつの間にか解けていたりします。
解けても役に立たない問題ばかりですが。


あまり読んでも得にならないこの文章を読んで頂けた方には、
御礼申し上げます。

特殊な測定機を扱っている人物が
どんなマニアな者なのか一端を知って頂くのも
良いかなと思って書きました。


--
高野智暢

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