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2017.01.11
A-0066. 平均自由行程の式の導出 — TT
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平均自由行程の式の導出
発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/
連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2017年1月11日号 VOL.066
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
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以前、X線管内の平均自由行程の計算をしました。
そのときに使った式は、公式として当てはめました。
(メルマガでは省きましたが、使う前に自分で式を導出していました。)
公式を天下り的に使うのは、あまり好きではない性分なので、
使う式は使う前に導出しておかないとスッキリしないのです。
今回は、平均自由行程λの式を導出してみます。
以前のメルマガで使った平均自由行程の式は、
λ = 1/{(√2) μσ }
でした。
μは、数密度で 1m^3 に何個という量(単位は、[m^-3])、
σは、散乱の有効断面積 [m^2] です。
まず、散乱の有効断面積が
σ = 4πr^2
と書けることを確認します。
分子を半径 r の球と仮定します。
2つの球が衝突することを考えるのですが、
一方の A が止まっていて、もう一方の B が速度 v で向かってくると考えます。
一方の球 A が衝突に関わる大きさを全て持っていて、
もう一方の球 B は点であると考えます。
すると、進行方向と平行で、球 A の中心を通る直線を軸とした
半径 2r の円筒内に、点 B が入っている場合に、
衝突が起こることが分かります。
言い回しが難しくなってしまいましたが、
要は、半径 r の2つの球が衝突するのは、
大きさを無視して最接近したときの
球の中心間距離が 2r 以下のときということです。
散乱の有効断面積σは、その半径 2r の円の面積を求めることなので、
σ = (2r)^2 ×π = 4πr^2
のように確かめることができました。
さて、衝突が起こってから次の衝突が起こるまでの平均自由時間τと
速度 v の掛け算が平均自由行程λです。
つまり、
λ = vτ
です。
そして、半径 2r で、高さ vτ の円筒の中に、
衝突する点 B が 1 つ入っている状況を考えれば、
分子の衝突が起こるときの数密度μの式を書き下せます。
その円筒の体積は、σ×vτ ですから、
その体積の中に 1個 ということなので、
μ = 1/(σvτ) = 1/(σλ)
です。
つまり、これを λ= の式に直すことで、
λ = 1/(μσ)
となります。
でも、分母に (√2) が足りません。
これは、1つの分子が速度 v で走っているという仮定のためです。
そこで、全ての分子が速度 v で走っていると考え直します。
速度 v で走る2つの分子の方向が、角度θとなっているとします。
2つの分子の相対速度を w と置けば、
それらの成す三角形の余弦定理から、
w^2 = v^2 + v^2 - 2vv cosθ
という式が得られます。
この両辺の平均値を取ります。
平均を取ったものは < > という括弧で括ることにします。
<w>^2 = <v>^2 + <v>^2 - 2<vv cosθ>
そして、θはランダムなので、cosθの平均を取ると、
<cosθ> = 0
です。
従って、
<w>^2 = <v>^2 + <v>^2 = 2×<v>^2
より、
<w> = (√2)<v> = (√2)v
になります。
全ての分子が速度 v という仮定より、<v> = v です。
1つの分子が速度 v で走っているときの式の v を
<w> に置き換えると、
μ = 1/(σ<w>τ) = 1/{σ(√2)vτ } = 1/{σ(√2)λ }
となるので、ようやく、
λ = 1/{(√2) μσ }
を得ることができました。
でも、これで終わりではないのです。
分子の速度が全て v というのは、現実的ではありません。
しかし、速度の分布がマクスウェル分布だとしても、
同じ結果が得られるのです。
今回は一応、使った式の導出ができたので、ここまでにします。
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高野智暢
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