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2015.10.14

A-0055. 3次元回転と電子 — TT

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3次元回転と電子

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2015年10月14日号 VOL.055

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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このメルマガの連載では、今年の4月から「群」の話題に始まり、
3次元回転に関する話題まで流れ着いてきました。

どこに向かっているかというと、
電子のスピンについて話をしたいと思ってここまで来たのです。

それは、自分が昔味わった感動を何とかお伝えしたいと思ったからです。

でも、その道のりは長そうです。
そこで、今回は計算はやめて、お話だけにしようと思います。


これまで扱ってきた 3次元回転は、ある有名な群になります。
それを「3次元回転群」と呼び、SO(3) という記号で表します。

SO(3) は、3次元空間のベクトル (x0, y0, z0) を回転して
何かしらの (x1, y1, z1) にうつす変換を全て集めたものです。
SO(3) は、あらゆる 3次元回転を含んでいますので、
角度の指定が連続的にできることから、無限個の要素を持つ集合です。


次に、3次元空間の (x, y, z) を
SO(3) と同じように変換する群として、少し変わったものを用意します。

そのために、虚数 i を持ってきて、
y に掛けて、x に足したものと引いたものを作ります。
(x + iy) と (x - iy) ができます。

とっても唐突ですが、ちゃんと全てを計算して、全部がつながったときには、
感動的な形が見えますが、今回はやりません。
どこをスタート(登山口)にして、どんな経路で、
どんなゴール(頂上)を見せると最も感動的かを考えるのは楽しいですが、
うまい文章にするのは、なかなか難しいです。

では、唐突に作った 2つの複素数を非対角成分に置き、
z と -z を対角成分とした 2×2 の行列を作ります。

この行列を変換する群で、(x, y, z) が
SO(3) と同じように変換するものは、SU(2) というものになります。

SU(2) によって変換される量は、スピノルと呼ばれ、
電子のスピンを表現することができる数学的対象になります。
SU(2) のスピノルとは、SO(3) のベクトル に対応した呼称です。

そして、スピンとは、電子の持つ属性で、磁気の元になるものです。


ここまで話だけで、しかも多くの飛躍があり、
感動を与えるどころか、混乱を招いたかと思いますが、

3次元回転を数学的に考え続けると、
磁石の元である電子のスピンにたどり着くということです。

3次元空間の性質に磁石の起源があると考えると、なんか素敵ではないですか?

勿論、実験によって電子のスピンが発見されていなければ、
数学から電子のスピンが発見されるということはありませんが、
関係なさそうな物事が抽象的な世界でつながるのは感動的です。


また、X線CTを扱っていると、
データの3次元回転を考えることもあれば、
X線発生原理を考えるのに電子について考えることもあります。

最近では、フィラメントから放出される熱電子について
いろいろ考える機会があり、仕事関数を調べていると、
マクスウェル・ボルツマン分布から、リチャードソンの式が出てきて、
さらに量子力学を適用するとフェルミ・ディラック分布から、
リチャードソン・ダッシマンの式というのが出てくるのを見て、
フェルミ・ディラック分布というと、電子のスピンと関係しているので、

何だかいろんなものが関連してつながっているなぁと感じるのです。


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高野智暢


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