連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
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球面SAGのテーラー展開
発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/
連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2021年1月13日号 VOL.118
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仕事上、球面SAGのテーラー展開を使って計算する場面に、
時々遭遇します。
毎日のように使っていれば、忘れることなく、定着するのでしょうが、
使う頻度はそんなに高くありません。
でも、忘れたころに(なぜか本当にまるで忘れたころを狙っているかのように)
球面形状や球面波に関する計算が必要になり、
その計算工程の早い段階で、球面SAGの計算をせざるを得なくなります。
ちょっと考えると、
半径 r の球面から、境界が半径 h の円となる領域を切り取った場合、
その領域は、高さ z のお椀型の形状となり、
z = r - √(r^2 - h^2)
と書けることが分かります。
この z を球面SAGと呼んでいます。
さて、h に対して、r がとても大きい条件の下で、
具体的な計算をする必要のある状況に度々出会います。
そこで、x = h/r とおいて、
f(x) = √(1 - x^2) = (1 - x^2)^{1/2}
という関数を考えることになります。
こうすることで、
z = r - r f(h/r)
が計算できるようになります。
そして、この f(x) をテーラー展開します。
微分をオイラーの記法で D と表すことにします。。
( D f が 1階微分、D^2 f が 2階微分 という具合に続きます。)
すると、以下のように計算できます:
f(0) = 1
D f(0) = (1/2)(-2x)(1 - x^2)^{-1/2} = -x(1 - x^2)^{-1/2} = 0
D^2 f(0) = -(1 - x^2)^{-1/2} - x(-1/2)(-2x)(1 - x^2)^{-3/2} = -1
D^3 f(0) = -(-1/2)(-2x)(1 - x^2)^{-3/2} - 2x(1 - x^2)^{-3/2}
- x^2 (-3/2)(-2x)(1 - x^2)^{-5/2} = 0
D^4 f(0) = -3(1 - x^2)^{-3/2} - 3x(-3/2)(-2x)(1 - x^2)^{-5/2}
- 9x^2 (1 - x^2)^{-5/2}
- 3x^3 (-5/2)(-2x)(1 - x^2)^{-7/2} = -3
従って、
f(x) = f(0) + D f(0)x + (1/2!)D^2 f(0)x^2
+ (1/3!)D^3 f(0)x^3 + (1/4!)D^4 f(0)x^4 + ...
なので、
f(x) = 1 - (1/2)x^2 - (1/8)x^4 + Ο(x^6)
となります。
これを z の式に戻すと、
z = r - r f(h/r)
= -r { - (1/2)(h/r)^2 - (1/8)(h/r)^4 + Ο((h/r)^6) }
= h^2 /(2r) + h^4 /(8r^3) + ...
になります。
そして、ほとんどの場合、最初の項で十分なので、
z = h^2 /(2r)
として計算を進めることになります。
この式は、たまにしか使わないと忘れてしまうので、
よく使っているときは、当たり前のように使っていて、
時間が経ってから自分の計算を見直すと、
あれ?これどうやって計算したのかな?計算間違えかな?
と思ってしまうことがあります。
その度に、テーラー展開の計算をしたノートを探して
確認することになるので、いつものように、ネットにアップして、
Googleで自分の書いた記事が検索できるようになると便利になります。
ちなみに、さらに高次の項まで計算する場合は、
g(x) = (1 + x)^α
をテーラー(マクローリン)展開しておいて、
x を -x^2 に置き換えて、α=(1/2) とするのが見通し良いです。
g(0) = 1
D g(0) = α
D^2 g(0) = α(α-1)
D^3 g(0) = α(α-1)(α-2)
D^4 g(0) = α(α-1)(α-2)(α-3)
なので、
(1 + x)^α = 1 + αx + (1/2!)α(α-1)x^2 + (1/3!)α(α-1)(α-2)x^3
+ (1/4!)α(α-1)(α-2)(α-3)x^4 + ...
と展開できて、x を -x^2 に置き換え、α=(1/2) とすると、
f(x) = √(1 - x^2)
= 1 - (1/2)x^2 - (1/8)x^4 - (1/16)x^6 - (5/128)x^8 - ...
となります。
--
高野智暢
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