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【 記 事 】

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フォトマスクの変形とパターン位置ずれ 
 
発行:エスオーエル株式会社 
http://www.sol-j.co.jp/ 
 
連載「知って得する干渉計測定技術!」 
2015年12月9日号 VOL.101 
 
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 
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インテルがEUV露光装置を15台発注したという話がありますが、 
この技術の進歩には、微力ながら我々の技術も関与しています。 
 
いくら良い露光装置があっても、パターンの原板であるフォトマスク 
が提供できなくては、最先端の半導体製造は実現できません。 
 
我々の提供するフォトマスクの平面度(表面形状)測定機 UltraFlat と 
λ/100 という基準平面は、他では到達しえない技術レベルに達しています。 
 
確かに、平面度測定機やλ/100 平面単体を製造する技術のあるところが 
他にないとは言い切れませんが、フォトマスクに関して実用レベルで最先端の 
露光技術を支えることができるところは、他には無いと断言できます。 
 
 
インテルは、7nmプロセスに挑戦しようとしています。 
それに対して、フォトマスクの平面度がどう関与するかという技術的な話を 
挙げるだけでもかなりの量になり、過去にメルマガでご紹介したものから 
まだご紹介できていないものまでたくさんあります。 
 
今回は、まだご紹介していなかったものの一つ、 
フォトマスクの変形とパターン位置ずれについて計算してみます。 
 
微細化で重要なものの一つに重ね合わせ精度があります。 
7nmを描こうというのに、1回目と2回目の露光で7nmの位置ずれがあっては、 
元も子もないのです。 
 
 
【状況設定と計算】 
 
厚み t、測定領域 2L の基板を考えます。 
2L の領域で理想的に平面度0だったとして、何らかのプロセスを経て、 
平面度が d になったとします。(つまり、平面度の変化が d です。) 
 
形状は、表面が凹になったとし、その曲率半径を R と置きます。 
 
最初、基板中心から距離 a の位置に表面パターンがあったとし、 
それが、平面度変化によって横方向(x方向)の位置ずれにどう影響するか計算します。 
変化後の x 座標は a から b になったとします。 
つまり、求めたい位置ずれ s は、 
 
  s = b - a 
 
と書けます。 
 
基板が凹に変化したということは、どこかに中立軸があるはずで、 
基板の表面と裏面の丁度中間にあるとします。 
 
一般的なx座標における位置ずれを計算する前に、 
x = a = L の位置での位置ずれを計算します。 
 
中立軸上では、長さは変わらないので、 
変化前に表面の位置 a を基板中心軸に投影した点 P は、 
変化後に中立軸に沿って原点(基板中央 x=0)からの長さを測っても a になっています。 
 
変化後の中立軸のなす円弧を考え、原点と曲率円中心と点P のなす角度をθとすると、 
 
  a = ( R + t/2 )θ 
 
と書けます。 
 
θを使うと、変化後の x = b の位置は、 
 
  b = R sinθ 
 
です。すると、s = b - a = R sinθ - a です。 
 
また、平面度変化 d もθを使って表すことができ、 
 
  d = R ( 1 - cosθ ) 
 
と書けます。 
これらの式から、θについて解いてみます。 
 
  θ = a / ( R + t/2 ) 
    = a / ( d/( 1 - cosθ ) + t/2 ) 
    = ( 2a - 2a cosθ ) / ( 2d + t - t cosθ ) 
 
ここまでで、まだ右辺に cosθ が残っていますので、 
移項するなどして、左辺 = 0 の形まで持っていきます。 
 
  2dθ + tθ - tθ cosθ - 2a + 2a cosθ = 0 
 
このままでは、計算するのが非常に厄介なので、 
θが十分小さい量であることを利用して、 
cosθ をテーラー展開し、2次の項まで使います。 
 
  cosθ = 1 - (1/2!)θ^2 + (1/4!)θ^4 - ... ≒ 1 - (1/2)θ^2 
 
すると、厄介な式が 3次方程式になり、 
 
  (t/2)θ^3 - aθ^2 + 2dθ = 0 
 
ですが、さらに θ=0 の解を除くと、因数分解によって 2次方程式 
 
  (t/2)θ^2 - aθ + 2d = 0 
 
を解けばよいことが分かります。θの解としては、小さい方を取り、 
 
  θ = ( a - √( a^2 -4td ) )/t 
 
です。ただし、x = a = L で計算しているので、 
この θ は、x の関数で、x = L として、 
 
  θ(L) = ( L - √( L^2 - 4td ) )/t 
 
と書くのが適切で、これによって R を表現すると、 
 
  R = L / θ(L) - t/2 
 
です。一方で、任意の x における θ は、 
 
  θ(x) = x / ( R + t/2 ) 
 
です。そこで、本当に求めたい s(x) は、 
 
  s(x) = R sinθ(x) - x 
 
と書けるので、θ(L)とθ(x)の違いに注意しながら計算していきます。 
 
  s(x) = R sin( x / ( R + t/2 ) ) - x 
       = ( L / θ(L) - t/2 ) sin( x / ( ( L / θ(L) - t/2 ) + t/2 ) ) - x 
 
そして、θ(L)を代入して整理すると、 
 
  s(x) = ( Lt / ( L - √( L^2 - 4td ) ) - t/2 ) sin ( x( L - √( L^2 - 4td ) )/(Lt) ) - x 
 
というちょっと面倒な式になります。 
でも、近似の取り方をもう少し大雑把にしてしまうと、あまりに小さな量なので、 
s(x) = 0 で消えてしまうので、仕方ありません。 
 
近似をするときは、いろいろと注意が必要で、収束の概念とか、 
なぜ高次項を切り捨てることに合理性があるのかをよく考える必要があります。 
 
高次項の影響が大きくなる場合は、高次項を無視することはできませんし、 
低次項が 0 だからといって、答えが 0 というのも乱暴です。 
(ゼロ平面を提供できますという謳い文句に注意が必要なのもこのためです。) 
(高次項まで0ですか?ということです。トロペルは、そこが明確なのでEUVに対応可能なのです。)


【実際の数値計算】
 
さて、後は電卓やエクセルで実際の数値を計算することができます。 
 
測定領域 2L = 140mm とします。(つまり基板中心からは、L = 70mm です。) 
基板厚みは、t = 6.35mm です。 
平面度変化を 50nm とします。つまり、d = 0.00005mm です。 
 
まず、曲率半径 R を求めてみます。すると、 
 
  R = 48.999993637... km 
 
です。とてつもなく平坦です。 
近似の取り方が上手くないと、 R = 49.000... km などになりますが、 
最終的に大きな数から大きな数を引いて、残ったわずかな数を評価する必要があるため、 
どの桁まで計算するか、近似は適切かなど、注意が必要です。 
 
それでは、位置 x = a = 70mm における位置ずれを計算してみます。 
 
  s(x=70mm) = -4.5nm 
 
になります。マイナスが付いているので、縮む方向です。 
任意の位置で計算可能で、例えば、x = a = 25mm では、s(x=25mm) = -1.6nm です。 
 
 
もし、凸変形であれば、符号を逆に取ればよく、 
例えば、d = -0.00005mm で計算すると、位置ずれの符号も逆になり、 
伸びる方向だと分かります。 
 
中立軸の長さが変わらないので、パターン側の表面が凹か凸かで、 
縮むか伸びるかになるのです。 
 
計算式を求めるときは、平面度 0 が d に変化した状況を考えましたが、 
平面度 d が 0 に変化したときも同様になります。 
伸びている凸側が縮んで、縮んでいる凹側が伸びて、中立軸の長さが変化なし、 
とすると、符号に注意が必要ですが、同じ計算をすることになります。 
これは、平面度 d の基板をチャックで 平面度 0 に矯正したときの 
位置ずれに相当します。 
 
これらの計算で分かることは、50nm の平面度であれば、 
数nm オーダーの位置ずれに寄与するということです。 
実際には、縮小率をさらに考慮するなどしますが、 
重要なのは、オーダーが数nmプロセスに対する数nmの位置ずれは、 
非常に気になる問題となり、各要素に割り当てられた平面度のマージンを 
十分削り得るものになるということです。 
 
 
以上の計算は、ArF液浸やダブルパターニングのときに既に話題になっていたものです。 
EUVで7nmという話が出て来て、あれ?あの時の計算どこやったっけ?と思い、 
計算ノートを探したのですが、なかなか見つからない。 
そこで、やっぱり、計算したものは、自分も見つけやすいようにメルマガに書いて、 
インターネットにアップしてしまった方がいいなと思って書いている次第です。 
 
 
-- 
高野智暢 


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