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【 記 事 】

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球面収差について

発行:エスオーエル株式会社
http://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2013年8月10日号 VOL.027

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皆様、こんにちは。
私ごとですが、先週の土日で富士山に登ってきました。
五合目から頂上までの往復、なかなか大変でした。

なぜこんな辛いことをわざわざしているんだと自問し、
毎回山登りを終える度に、もう登らなくてもいいやと思い、
でもまた登るという、山には不思議な魅力があります。


さて、2013年6月10日のメールマガジンで、
「TomoScopeのX線管には、球面収差を抑える工夫がなされています。」
と言及しましたので、今回は球面収差とはどのようなものかをご紹介します。


まずは、収差とは何かを説明しなくてはなりません。
物体の1点から出た光は、光学系を通って、再び1点に集まって欲しいのですが、
なんやかんやで1点に集まらず、ボケが生じます。
これを収差といいます。


2年前のメールマガジンで、「球面の結像公式」をご紹介しました。
  連載「知って得する干渉計測定技術!」 VOL.045 球面の結像公式

このとき、sinθ ≒ θ とする近似を使いました。
しかし、本来は、sin を級数展開すると、
  sinθ = θ - θ^3/3! + θ^5/5! - θ^7/7! + θ^9/9! - .....
のように無限に続きます。

そこで、sinθ ≒ θ - θ^3/3! のように、3次項まで使うと、
何が起こるかを調べてみようと考える人が出てきます。
これが有名な「ザイデルの5収差」と呼ばれるもので、
  ・球面収差
  ・コマ収差
  ・非点収差
  ・像面湾曲
  ・歪曲収差
という5種類の収差が生じます。

今回のテーマは、その中の「球面収差」と呼ばれるもので、
光軸上の1点から出た光が1点に集まらないという収差になります。


----------------(読み飛ばしできます)

状況設定として、上記の「Vol.045 球面の結像公式」に沿って説明します。

sinθ ≒ θ の近似では、距離 s にある物体は、光学系を通して、距離 s’ に結像します。
そのときの公式が
  n’/s’- n/s = (n’-n)/r
でした。

では、近似を使う前の式
    pn’(s’- r) = p’n(s - r)
から始めて、p と p’を頑張って消去します。

三角形OPC について、余弦定理を使うと、
  p^2 = r^2 + (s - r)^2 + 2r(s - r)cosθ
が得られます。
(三平方の定理でもすぐに同じ式が出ます。)

p の高さ(光軸からの距離)を h とし、
cosθを展開すると、
  cosθ = √(1 - sin^2θ) = √(1 - h^2/r^2) = 1 - h^2/(2r^2) - h^4/(8r^4) - .....
となりますので、3次までの項を使う近似を適用すると、
  cosθ ≒ 1 - h^2/(2r^2)
です。

従って、
  p^2 = r^2 + (s - r)^2 + 2r(s - r)( 1 - h^2/(2r^2) )
となるので、整理して、
  p^2 = s^2 ( 1 + (1/s - 1/r)(h^2/s) )
を得ます。
ここで、p^2 の 平方根を取る際に、3次までの項を使う近似を使っていることを思い出し、
  p = s ( 1 + (1/s - 1/r)(h^2/(2s)) )
となります。

同様に、p’について、
  p’ = s’( 1 + (1/s’ - 1/r)(h^2/(2s’)) )
が得られます。
( s’の符号が合わないという方は、最後にちょっと説明しますので。 )

これで、p と p’が消去でき、
  n’/s’- n/s = (n’-n)/r + (1/s - 1/r)(1/s’- 1/s)(n/s’- n’/s)(h^2/2)
が得られます。(式☆)

像が1点に集まらない様子を見たいので、右辺の s’を消去します。
ここでは、結像公式 n’/s’- n/s = (n’-n)/r を s’について解いて、
式☆の右辺の s’に代入してしまいましょう。
s’に対してさらなる近似を使うことになりますが、見たい球面収差の性質は残ります。

すると、
  n’/s’- n/s = (n’-n)/r + n(n’- n)/(n’)^2 (1/s - 1/r)^2 ( n/r - (n’+n )/s )(h^2/2)
となるので、物点を無限遠にもっていくと、s→∞ なので、1/s = 0 とでき、

  1/f’= (n’-n)/rn’+ n^2(n’-n)/((n’)^3 r^3)×(h^2/2)

が得られました。(ただし、s→∞のときの s’を f’と表した。)


計算を追うのはとても大変だと思います。
ここまで、三角関数の展開を1次までから3次までに拡張したら、
とっても面倒だということが分かって頂ければそれでよいと思います。

----------------(読み飛ばしましたか?)


さて、何が分かったかと言いますと、
1次の結像公式に対して、3次では、h^2 に比例した量が加わるというのが結論です。
そのため、どの h の点 p を通ったかによって結像の位置がずれ、像が1点に集まりません。
これが、球面収差の原因です。


TomoScopeは、電子線を磁界レンズで1点に集めようとします。
しかし、球面収差のため、通常は1点に集まらず、拡がりを持ってしまいます。
そこで登場するのが「これ」です!(ここで「これ」の実物を見せたい。)

球面収差を抑える原理そのものは、それほど難しくありません。
ヒントは、上記の計算の中に含まれています。
一応企業秘密ということにしておいて、「これ」をご覧になりたい方は、
是非TomoScopeをご購入頂き、私がX線管を分解してお見せいたします。(というのはどうでしょう)


ところで、計算を丁寧に追って頂いて、s’の符号が合わないという方は、
単純に -s’と置き換えて計算を進めてください。

本当は、符号のルールを最初に説明しておくべきでした。
点V の右と左で長さの符号を逆にする必要があります。

これによって、1つの結像公式を使って「実物体」「虚物体」「実像」「虚像」を
s と s’の符号で場合分けで表すことができます。

実物体が実像になるのはイメージ頂けると思います。
実物体からの光が発散し、虚像になっている状況も比較的簡単に説明できると思います。
虚物体が実像になったり、虚物体が虚像になる状況は、言葉での説明がなかなか困難です。

全てを説明すると、延々と長くなりますので、面白そうな話題は、
またの機会に個別にメールマガジンの形にまとめてみます。


今回は、
 ・球面収差の計算は面倒だ
 ・収差があると1点に集まらない
 ・収差を抑える工夫があります
ということでした。

--
高野智暢


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